本当は怖い?完全データ入稿のひみつ
2021/04/22
こんにちは、パッケージのフヂヤです。
印刷物を入稿された経験のある方ならご存知かも知れませんが、
今回は、「完全データ入稿」のお話しです。
印刷通販のサイトなどを見てみると、必ず表記してあるのが
「必ず完全データで入稿してください」の一文。
また、お客様によっては
「完全データで入稿しますから」
と一言添えていただける方もいらっしゃるかと思います。
さて、完全データ入稿とは、いったい何なのでしょうか?
一言で申し上げれば、「修正の必要が無い、印刷可能なデータ」となります。
しかし、これが簡単なようで難しい…
「必ず完全データで入稿してください」とおっしゃる業者さんは、
同業者や印刷に詳しいデザイナーさんなどを対象にした、完全にプロユースなのでしょう。
つまり「完全データ入稿」を日本語に翻訳すると
「ウチでは一切責任は持ちませんよ、全て自己責任ですよ」入稿という意味にも
解釈できかねないものなのですから…
そこで、完全データの中にひそむ、恐ろしいトラップについて解説したいと思います。
BK100%のオブジェクト
こちらは、もっとも多い印刷トラブルの一つではないでしょうか?
通常、印刷データを製版出力する際、BK100%オブジェクトはノセになるように設定されています(ブラックオーバープリント)。
これは、スミ文字や罫線の見当ずれを防ぐためなのですが
広い面積のスミベタ等では、背景が透けてしまうため予期せぬトラブルを招いてしまうことがあります。
〈製版前〉
データ上はこう見えますが…
〈製版後〉
印刷すると、BK100%オブジェクトの背景が透けて見えます!
これを防ぐためには2通りの方法があります。
1.BK100オブジェクトと認識させない
「BK100オブジェクトはノセ」と機械が自動で認識してしまうため、「BK100オブジェクトではない」と認識させれば良いのです。具体的には、BK100%にCMYのいずれか1%を追加してやります。1%の網点はほとんど表現されないため、実質的にはBK100%と変わりありません。
(例)C 1% M 0% Y 0% BK 100%
2.リッチブラックを使う
リッチブラックとは、BK100%以外にも、CMYの濃度を上げて表現する「濃いブラック」のこと。こちらもBK100%オブジェクトではないのでノセにはなりません。
ただし、C 100% M 100% Y 100% BK 100% のような、400%はNGです。合計で300%くらいまでが目安です。
(例)C 50% M 50% Y 50% BK 100%
恐怖のオーバープリント
オーバープリントは、皆さんご存知でしょうか?
大昔からイラレに装備されている、オブジェクトをノセに指定できる機能なのですが、これがくせ者なのです。意図してこれを使っている方は、非常に少ないような気がします。
では、どのようなトラブルが起こるか?
〈製版前〉
〈製版後〉
なんと、あるはずのものが、無くなってしまいました!!
これは、白いオブジェクトにオーバープリント指定がしてあったという事故事例です。
画面上では見えているものが、出力の際は白がノセになるので見えなくなるのです。
オーバープリント指定された濃色オブジェクトを流用して、その色を白に変えたことで意図せず白のオーバープリントができてしまったのです。
データ上にあるものが、製版時には無くなってしまうという、まさに時限爆弾アイテム。
せっかく大昔から装備されている機能ですが、ノセの表現はコントロールしやすい「乗算」をお使いいただいた方が安全に思います。
※株式会社フヂヤでは、お客様から入稿されたデータは、スクリプトでオーバープリントのチェックを行っています。
※株式会社フヂヤでは、特にご指定のない限りオーバープリントは解除させていただいております。
パッケージには必須! リサイクルマーク
パッケージ業界においては、「紙マーク」「プラマーク」とよく呼ばれていますので、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?
この二つのリサイクルマークは「容器包装リサイクル法」に定められておりまして、「紙製容器包装」「プラスチック製容器包装」の表示が義務づけられています。
また、上記のように表示サイズも決まっていまして、印刷では6mm以上、エンボスでの表現の場合は8mm以上となります。
デザイン上はじゃまな存在かも知れませんが、法律で義務づけられたとても大切な要素なのです。地味な存在なので、「ついうっかり」ということも。
「完全データ入稿の業者さんに発注したら、リサイクルマークが無いまま製品ができてしまった!」なんて話も、どこかから聞こえてきそうです…。
フヂヤでは、パッケージのプロとして、入稿データのチェックの中でリサイクルマークの有無を確認させていただいておりますのでご安心ください。
ちなみに、「紙マーク」「プラマーク」の表示義務は、あくまでも「容器包装」であることが前提ですので、「商品の包装」に使用する物で無ければ表示の必要はありません。
また、一般消費者の手に渡らない業務用の容器包装にも表示義務はありません。
まとめ
ざっとパッケージのデータ作成にまつわる落とし穴について紹介させて頂きましたが、いかがでしょうか?
それでも、奥の深いイラレの世界。
まだまだ我々の想像に及ばない隠された禁則が残されていそうです…
前述のイラストにもありますように、塗り足しやインクの逃げ方、法律に絡むことでしたら加工食品の品質表示の方法など、パッケージのデータは様々なノウハウが複雑に絡み合ってできています。
パッケージ制作のノウハウをお持ちのお客様は、安価な代わりに「自己責任」の印刷通販をご利用されるのもまた一つの方法でしょう。
しかしながら少しでもデータに不安のあるお客様は、私どものような相談のできる専門の業者におまかせ頂くのが無難かも知れません。
パッケージのフヂヤでは、お客様からご入稿いただいたデータは、弊社規定のチェック後、必要に応じて修正を施した上でPDFまたは出力紙にてご連絡させていただいております。
ここで、あえて言わせてください。
フヂヤは「不完全データ入稿対応です!!」と。
今後ともパッケージのフヂヤをよろしくお願いいたします。
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